スマートフォンの普及が進む現代においても、そのシンプルな操作性や月額料金の安さから根強い人気を誇る「ガラケー」(フィーチャーフォン)。しかし、通信規格の世代交代に伴い、多くのガラケーが利用する3G回線がまもなく完全にサービスを終了します。これにより、ユーザーは機種の買い替えを迫られる一方、大量に発生する古い端末の処分が新たな社会問題として浮上しています。本記事では、今後も利用可能な最新のガラケー事情と、世界的に重要性が増す電子機器リサイクルの動きを合わせて解説します。
3G終了後も進化を続ける「ガラケー」という選択肢
携帯大手各社は3G回線のサービス終了を順次進めており、auは2022年3月、ソフトバンクは2024年4月にすでに終了。NTTドコモも2026年3月末に完全停波を予定しています。これにより、現在3G回線を使用しているガラケーは通話や通信ができなくなります。
しかし、これはガラケーそのものがなくなることを意味するわけではありません。現在、市場の主流は4G回線に対応した「4Gガラケー」や、Android OSを搭載した「ガラケー型スマホ」へと移行しています。これらのモデルは、従来のガラケーの利便性を維持しつつ、より現代的なニーズに対応する機能を備えています。
例えば、京セラが開発したドコモの「DIGNOケータイ KY-42C」は、通話機能を重視するユーザーに最適な4Gガラケーです。画面の文字が見やすく、強力な振動機能「でかバイブ」や聞き取りやすい大きな着信音で、大切な連絡を見逃しません。Wi-FiやBluetoothにも対応しており、2台持ちの通話専用機としても高い実用性を誇ります。
アプリも使える「ガラケー型スマホ」の登場
一方で、「見た目はガラケー、中身はスマホ」というコンセプトの「ガラケー型スマホ」も注目を集めています。ピーアップ社の「Mode1 RETRO II MD-06P」はその代表格で、Android OSを搭載しているため、Google Playストアからアプリをダウンロードして利用することが可能です。
このタイプの端末は、慣れ親しんだテンキーでの操作に加え、スマートフォンと同様のタッチパネル操作にも対応。約4800万画素の高性能カメラを備えるなど、機能面ではスマートフォンに引けを取りません。SNS疲れなどを背景に、多機能なスマホから距離を置きたいと考える若者層や、アプリは使いたいがスマホの操作には抵抗があるというシニア層から新たな支持を得ています。
機種変更の裏で深刻化する「電子廃棄物」問題
3Gサービスの終了に伴う機種変更は、裏を返せば膨大な数の古い携帯電話が不要になることを意味します。英国の通信事業者giffgaffの推計によれば、英国内だけでも5500万台以上の携帯電話が引き出しの奥で眠っているとされています。これらの電子機器を一般ごみとして廃棄することは、大きな間違いです。
携帯電話の内部には、リチウムやコバルトといったバッテリー用の希少金属、そして回路基板には金、銀、銅、パラジウムなどの非常に価値の高い資源が含まれています。これらを適切に回収・リサイクルすれば、新たな資源採掘の需要を減らすことができます。
しかし、不適切に埋め立てられたり焼却されたりすると、これらの貴重な資源が永久に失われるだけでなく、有害物質が土壌や地下水に漏れ出し、深刻な環境汚染を引き起こす危険性があります。さらに、先進国から発展途上国へ電子廃棄物が輸出され、劣悪な環境で働く人々の健康を脅かすという社会的な問題も指摘されています。
世界で広がるサステナブルなリサイクルサービス
こうした問題に対応するため、国内外でテクノロジー製品の専門的なリサイクルサービスが普及し始めています。例えば、前述のgiffgaffは、ユーザーが不要になった携帯電話を簡単かつ安全にリサイクルできる仕組みを提供しています。
ウェブサイトで端末情報(メーカー、モデル名など)を入力すると、端末の状態に応じた買取価格が提示されます。ユーザーは無料で提供される梱包材を使って端末を送るだけで、査定額を現金で受け取ったり、提携する慈善団体へ寄付したりすることができます。市場価値がなくなった古い機種であっても、責任を持って資源リサイクルを行うのが特徴です。このようなサービスは、データ消去も専門施設で確実に行われるため、個人情報漏洩のリスクもありません。
企業が利益追求だけでなく、社会的・環境的課題の解決に貢献する動きは世界的な潮流となっており、厳しい基準を満たした企業に与えられる「B Corp認証」などもその一例です。私たち消費者も、新しい携帯電話を選ぶ際には、その機能や価格だけでなく、古い端末をどのように処分するかが環境や社会に与える影響まで考慮することが、これまで以上に求められています。