近年、スマートフォン市場において「折りたたみ端末」の存在感が急速に高まりつつある。特に中国市場を中心に、これまでの常識を覆すような薄さ・軽さ・性能を兼ね備えた最新モデルが続々と登場しており、アップルにとってももはや無視できない状況となっている。

中国で進化を遂げた折りたたみスマホ

2024年7月、中国ではシャオミが新型の折りたたみスマートフォン「MIX Fold 4」を発表。この端末は、折りたたんだ際の厚さがわずか9.47ミリ、重さ226グラムという驚異的な薄型・軽量設計を実現した。iPhone 15 Pro Maxが8.25ミリ、221グラムという仕様であることを踏まえると、折りたたみ機構を備えながらも、iPhoneに匹敵する携帯性を実現している点が注目される。

さらに、シャオミに続いて登場したオナーの「Magic V3」は、折りたたんだときの厚さが9.2ミリ、開いた状態では4.35ミリという、現時点で世界最薄の折りたたみスマートフォンとして注目を集めている。この急速な技術進化は、もはや折りたたみスマホを“特別な製品”ではなく“次なる標準”として捉える時代の到来を示している。

サムスンとファーウェイの革新が呼び水に

折りたたみスマートフォン市場は、2019年のサムスンとファーウェイによる初期投入から始まった。当初は“画面が曲がる”こと自体が話題となったが、以降、カメラ性能やデザイン性の向上を経て、ファーウェイの「Mate X3」登場時には一般的なスマホと同じ感覚で使える製品に進化した。

Mate X3は折りたたんだ状態で11.8ミリ、239グラムと、iPhone 14 Pro Maxより軽量であった点が話題を呼び、中国国内のユーザー層を一気に拡大させた。

一方、サムスンも「Galaxy Z Fold5」や「Z Fold6」で着実に薄型・軽量化を進めてはいるが、中国メーカーの進化のスピードには追いつけていない。

世界市場でのシェアはまだ小さいが…

折りたたみスマートフォンの出荷数は2023年に約1,810万台と、スマホ全体の2%未満にとどまる。しかし、2024年には2,500万台、2028年には4,570万台に達すると見込まれており、少数派ながらも確実に成長している市場である。

この数字だけを見れば、折りたたみスマートフォンの普及は限定的にも思えるが、大手スマホメーカーが開発競争を繰り広げるのには明確な理由がある。

「次の進化」を象徴する存在に

現在のスマートフォンは、5万円台のミドルレンジモデルでさえ十分な性能を備えており、ハイスペック機との違いが分かりづらくなっている。デザインやUI(ユーザーインターフェース)での差別化を図るメーカーも増えており、高価格帯モデルの訴求力が相対的に低下しているのが現状だ。

また、先進国だけでなく、中国などの主要市場でも買い替え需要に頼らざるを得ない状況となっており、消費者の関心を再び呼び起こすためには、新たな体験を提供する必要がある。

このような背景のもとで、折りたたみスマートフォンは“目新しさ”と“実用性”を両立した存在として注目されている。さらに、高価格帯でも一定の説得力を持つことから、メーカーにとっては収益面でも魅力的な選択肢となっている。

アップルはいつ動くのか?

現在、アップルは折りたたみスマートフォンの市場に参入していないが、競合他社の進化と市場の変化を考慮すれば、遅かれ早かれ対応を迫られる可能性が高い。すでにプロトタイプの開発や特許出願も報じられており、水面下で準備を進めていると考えられる。

アップルが折りたたみ市場に本格参入すれば、そのデザイン性やエコシステムの強さを武器に一気に存在感を示すことは想像に難くない。しかし、そのタイミングを誤れば、既に成熟しつつある市場に後発で乗り込むリスクも孕む。