若者のファッションに表れる変化

日本では、安価な商品しか売れなくなったという現象が、若者のファッションからも見て取れる。海外の若者たちは最新のスニーカーやトレンドのファッションを身に着けているが、日本ではその光景はほとんど見られない。日本の若者が履いているスニーカーは、最新モデルではなく、数シーズン前のデザインが主流だ。また、欧米で人気のあるブランドよりも、在庫処分のようなブランドが選ばれる傾向が強い。

これは、日本の若者がファッションに興味を失ったわけではない。日本人は昔から見た目を気にする国民性を持っている。しかし、最新のスニーカーが2〜3万円もする現在、その価格を支払える若者が減少しているのが現状だ。

バッグや服装にも同じ傾向が見られる。20年前と比べ、日本では安価なバッグを持つ人が増えた。女性の間では、布製や合成皮革のバッグが主流になり、品質の低下が顕著だ。服に関しても、ブランド品ではなく、薄い生地の服や毛玉が目立つ衣類を着る人が増えた。一方、欧米の若者は質の高い生地の服を着ており、アウトドア製品や高級ウール素材の衣類が一般的になっている。

高品質・高価格の商品が減少

店頭に並ぶ商品のラインナップも、日本と他の先進国では大きく異なる。例えば、イギリスやドイツでは、都市部のデパートでメリノウール100%のスポーツウェアやセーターが販売されている。Tシャツ1枚で1万5000円、セーターなら3万円程度が一般的な価格だ。これに対し、日本では高価格帯・高品質の商品を見つけるのが難しくなっている。それだけ、日本国内の購買力が低下しているのだ。

この影響は、海外ブランドの日本市場撤退にも現れている。2019年にはフォーエバー21やアメリカンイーグルが日本市場から撤退し、その他の外資系ブランドも苦戦を強いられている。日本の若者は海外旅行でブランド品を買い漁るどころか、国内の高級ブランドショップにも足を運べなくなっている。

世界で最も安いiPhone、それでも買えない日本人

2022年、Appleが「iPhone14」を発売した。日本での販売価格は11万9800円と10万円を超え、多くのSNSユーザーが「高すぎて買えない」「高級品になった」と嘆いた。しかし、日本のiPhone14の価格は世界37カ国の中で最も安い。

例えば、トルコではiPhone14の販売価格が日本の2倍以上にもなる。それにもかかわらず、日本では「高すぎる」と言われ、購入を諦める人が多い。市場調査会社BCNのデータによると、iPhone14の販売台数はiPhone13より31%、iPhone12より69%減少した。日本人は世界最安値のiPhoneすら購入できず、型落ちのiPhone13や廉価版のSEシリーズに流れる傾向が強まっている。

広告から見える消費の現実

日本と海外を行き来していると、広告の違いに気づく。欧米では、高級マンションや最新モデルの自動車、ハイエンド家電の広告が盛んに流れている。しかし、日本ではそうした広告はほとんど見られず、安価な軽自動車やコンパクトカーの宣伝が目立つ。

化粧品に関しても、日本では「プチプラコスメ」が取り上げられ、高価格帯の製品の広告は減少傾向にある。欧米では今でも高級ブランドの化粧品が広告の中心を占め、消費者もそれを購入する経済的余裕を持っている。

この違いは、日本人の美意識や消費意識が変わったからではない。むしろ、日本人は依然として自分のイメージを気にする傾向が強い。しかし、経済的な事情から「安いものを買わざるを得ない」状況になっており、企業側も高額商品を売り出すことを諦めてしまっている。

変わる日本の消費行動

かつての日本は、高品質な商品を積極的に購入し、海外でもブランド品を大量に購入する消費大国だった。しかし、現在では若者を中心に、安価な商品に依存せざるを得ない状況が続いている。

iPhoneが世界で最も安く販売されているのに「高い」と感じる日本人。この現象が示しているのは、日本の購買力の低下と、消費者の選択肢がますます限られているという厳しい現実だ。